日本国際保健医療学会 学生部会



〜2007冬春 学生フィールド実習活動報告〜


2007冬春 学生フィールド実習活動報告 企画詳細
ラオス:聖マリア病院臨床研修国際保健コース実習
タイ:HIV・結核疫学臨床研究プロジェクト


◆企画詳細◆
エントリー実施期間  : 2006年11月、2007年1月
学生エントリー数  : 32名
実習参加学生数  : 4名(第2次選考を実施した学生6名)
実現した実習  : 3件(予定されていた実習は5件)
  ☆ラオス:聖マリア病院臨床研修国際保健コース実習(学生1名)
☆タイ:HIV/TB疫学臨床研究プロジェクト見学(学生2名)
・スーダン:NPO ROCINANTE臨床医学実習(学生1名)

☆印がついている実習は以下に参加者からの実習報告書を掲載してあります。
  

◆ラオス:聖マリア病院臨床研修国際保健コース実習◆

【基本情報】
参加学生  : 萩原 加奈子(慶應義塾大学看護医療学部3年)
指導教官・機関  : 聖マリア病院 国際協力部 浦部大策先生、高岡宣子先生
期間  : 2007年 2月1〜24日
渡航先  : ラオス人民民主共和国
分野  : 地域保健
実習形態  : 臨床研修医を対象とした研修への参加
実習内容  : 1.国内研修:.廛蹈献Дトを作成するための考え方を学ぶ
            ▲薀ス(カムアン県)の保健医療体制の現状を理解する
            事前に収集した情報からアクションプランを作成する。
             テーマは「ラオスにおける小児栄養不良の改善」と設定されている。
            (不足している情報については質問表を作成する)
 : 2.国外研修:仝獣呂砲いて予め作成した質問表により、情報をさらに収集する。
            ⊇犬瓩蕕譴疹霾鵑魎陲砲気蕕縫▲ションプランの内容を深める。

【目的】
1.ラオス(特にカムアン県)の環境や医療・保健の現状を理解する
2.プロジェクトを立案するための手段について理解する
3.2の知識を基に、対象地域の医療・保健状況を向上・改善するためのアクションプランを作成し、そのスキルを習得する。

【日程】
日程
 
日時 内容
2/1〜4 講義(ラオス保健医療状況、PCM手法、小児栄養プログラムなど)
2/5〜7 アクションプラン作成・インタビュー準備
2/8,9 タイへ渡航
2/10 ラオス カムアン県へ移動
2/11 ISAPH事務局での打合せ
2/12〜16 ヘルスポスト視察訪問、コミュニティ視察訪問、関係機関スタッフからのヒアリング、VHV研修/FU見学
2/17,18 JICAプログラム(Kidsmile Project訪問、看護教育プロジェクト訪問)
2/20〜21 資料整理、福岡へ帰国
2/22〜23 資料整理、アクションプラン作成
2/24 プレゼンテーション

【費用概算】
総額 : およそ25万円
[内訳]
・航空券・・・9万円弱
・実習中は移動(飛行機)・宿泊・食事などほとんど先生方・研修医の方々と一緒でした。
・国内の研修では聖マリア病院の研修施設を無料でお借りしたので、国内研修では食費のみかかりました。

【事前準備】
事前準備を行う時間が一週間と限られていたため、あまり十分な準備を行うことができなかった。
しかし、前回のマッチング企画を通じてラオスに行った際の資料を読み直したり、「国際保健学第2版」のPCMについて書かれている部分を読んだ

【成果】
目的として「ラオス(特にカムアン県)の環境や医療・保健の現状を理解する」「プロジェクトを立案するための手段について理解する」「理解した知識を基に、対象地域の医療・保健状況を向上・改善するためのアクションプランを作成し、そのスキルを習得する。」の三点を立てていた。

今回研修を通じ、最初に行われた国内研修により、action plan作成の現状分析を行うため、ラオス国全体を理解することが不可欠だった。
社会主義国であり多民族国家であり、民族により生活形式に違いがあり、また医療保健は日本と同様に第一次医療から第三次医療の形式をとっているものの、まだ不十分であることなど情報を収集することで理解を深めることができた。
国外研修の前にaction planを作成するにあたり、必要となる講義を受けることが出来、それを活かした活動計画を立てることができていたと思った。
そのため二つ目の目標である手段について理解を深めることができたと思っていた。
しかし、ラオスから帰国後の最終のまとめにおいて、action planの中で最後の「モニタリング・評価」の項目に対し、表面的に理解はできていても実際に何を評価指標におくか、ということに非常に頭を抱えた。
今回の研修で理論の一部を理解することができたが、十分に理解を深め、一人でもaction planが作成できるほどに知識・技術を獲得ができたかというと、やはり難しい。
しかし今回の研修を通じて、どの様に活動が組み立てられ実施されているのか、地域レベルから国レベルまで理解することができたと思う。

今まで漠然としていた「国際保健」という分野が、専門家としてどの様に行われているのか理解を深めることができた。



【感想】
この研修は「地域医療という視点から、地域やそこに住む住民への保健医療の改善を図るために、現在の現状把握と問題分析を行い、問題解決のための活動計画の作成手順を理解し、実際に計画を立案し、その妥当性を協議することができる」という目標が設定され、臨床研修医2名に対し行われているものに、学生として参加させて頂いた。

この研修ではラオス国の地域医療を考え、その中でも「小児栄養改善」というテーマの下、実際に自分で活動計画を作成していくことを体験した。
2006年夏の研修出ラオスにおいて提供されている医療を理解し、今回は一体どの様な協力を日本人として、スペシャリストとして行っているのか、実際に自分の目で確認し体験したいと思い参加した。
自分の手を動かしながら、情報を収集し、実際に現地の人に対しインタビューを行い、それらの情報から現状を分析し、目標を設定し、そのために必要な活動を計画していく、という一連の流れを行った。
自分が立てた「村における成長モニタリング強化」というテーマに沿って、自分で活動を考えることを通じ、改めてその国の社会的背景、文化背景を理解することが不可欠だと思った。
今行われている医療の現状を知ることも大切だが、なぜその様な状況に至っているのか、ラオスの住民達はなぜその生活習慣を行っているのか、「なぜ」を突き詰めラオスの文化や生活背景を知ることの大切さを学ぶことができた。

その上で活動計画を立てる際、「曖昧な日本語表現」があることを知った。
自分が表現しようと思っている本心を相手に伝えるためには、言葉を一つ一つ選び、どの表現が相手に対し効果的に正しく伝わるのかを考えることが必要なことを学んだ。
共に働くスタッフ同士でこれから行おうと思っている活動に対し、同じことをイメージし共通認識を持つためには、適切な表現を使う必要があると思った。
また日本人のスタッフにより国際協力を行う際、その仲介役としてローカルスタッフが必要である。
彼らに対し自分達が行おうと考えている活動を正確に理解してもらうためのコミュニケーションも大切だと思った。
そして、今回の研修を通じ、いかにその国に合った活動計画書を作成することが難しいか、ということを学ぶことができた。

より良いものを常に求める日本人と異なり、現状に満足をし、何か期待することがあったとしても他力本願なラオス人に対し、保健医療システムを改善することは難しいことを知った。
日本がいつまでも援助を継続できるわけではないので、いつかはラオス人が自らこの国の保健医療を引っ張っていかなくてはならない。
しかし現状に対する問題意識が低く、他者に頼ってばかりなラオス人に対し援助を行うことがいかに難しく、その状況に合った活動を計画することの難しさを知った。
言葉で言うことは簡単だが、その現状に対し適切な援助を行うためには様々な角度からのアプローチが必要であり、それに対する準備を怠らないことが不可欠であることを学んだ。




【今後の提言】
今回の研修を通じて具体的に国際保健協力が行われるのか、その現場を見学し体験することができたと思う。

実際に現状分析を行うに当たり自分達で現地の方々にインタビューを行って情報を集めたり、現地で活動しているNGOのスタッフの方々から活動を行う難しさを聞き、自分が立てた活動計画を調整したり、自分の手を動かすことにより、本当に一部ではあるが、国際保健の一場面に触れることができた。
今回自分が獲得した「考え方」は国際保健だけでなく、様々な場面に応用することが可能である。

目標を設定することなく、ただ闇雲に動くのではなく、どんなsuper goalを持ち、目的・成果を持っているのかということを意識しながら活動を組み立てることの大切さを学ぶことができた。

今回の学びを様々な場面に活かし、より充実した活動を行えるようになりたいと思った。


◆タイ:HIV・結核疫学臨床研究プロジェクト◆

【基本情報】
参加学生  : 鶴岡 香絵(三重大学医学部医学科5年)
 : Tさん
指導教官・機関  : 国立国際医療センター研究所呼吸器疾患研究部 櫻田紳策先生
期間  : 2007年2月12〜18日
渡航先  : タイ チェンライ州
分野  : 保健医療・医科学
実習形態  : 研究調査に同行
実習内容  : HIVと結核に関わる現地NGOの幅広い活動の視察など
 : 1.HIV感染者のデイケアセンターにおける活動
 : 2.疫学調査やデータ管理の実際
 : 3.臨床研究(臨床免疫・遺伝学等)実施

【目的】
1.鶴岡 香絵
 ・感染症コントロールにおけるNGOの研究活動の実際を学ぶ
 ・タイにおけるHIV・結核の実情を見る
 ・日本人としてタイ(アジア)医療へ関わる事の意義を知る

2.Tさん
 ・タイにおけるHIV感染者の現状を知る。
 ・HIV感染者に対するタイ政府及び現地NGOの取り組みを知る
 ・調査や研究の方法を理解する


【日程】
日程
 
日時 内容
2/12 Left Nagoya/Japan. Arrived Chiang Rai、meeting the staff of TB/HIV research project
2/13 Observed TB surveillance (including HIV tests) at Maechan Hospital
2/14 Observed TB screening for 21 HIV+ patients at Khuntai Community Center
2/15 Observed TB/HIV clinical trial (2 patients) at Chiang Rai Hospital
2/16 Discussion
2/17 Summary, left CR
2/18 Arrived Nagoya/Japan


【事前準備】
1.鶴岡 香絵
 *渡航にあたって:
  予防接種(A型肝炎・破傷風)、航空券・宿泊手配、現地基本情報の収集、
  受け入れ先の先生・現地NGOスタッフとの事前打ち合わせ(日程調整等)

 *実習にあたって:
  特に要求されなかったが、HIV/AIDSや結核に関する基本的な医学知識(症状、診断、治療等)は、 NGO活動をより理解する上で必要と
  された。また、タイにおけるHIVの状況を知る目的で、インターネット上にて文献検索を行なった。

【成果】
1.鶴岡 香絵
1)NGOが疫学的あるいは分子生物学的に感染症予防・治療に関わっている様子を学んだ。
具体的には、NGO職員が病院へ訪問しHIV/TB患者のData収集をする様子、 また実際に患者に病状や薬剤の副作用等を問診し定期検査を医療機関と連帯して長期的に行っている場面を見学した。 これら疫学Dataを解析して臨床医学へ応用しようとする試み、すなわち、 より効果的なTB・HIV検出方法あるいは治療法を確立しようという試み、があることを知った。
また同時に、患者の検体から、HIV/TB感染の病理を分子生物学的に解析しようと、 基礎研究を実施している面も持ち合わせていることを学んだ。NGOといえ、基礎から臨床、 また分子レベルから疫学レベルまで、非常に幅広い研究活動を行ない得ることを知った。

2)タイでは年々増加率は抑えられてきているが、依然としてHIV発症者は増えてきている。 特に北部は、かつて非常に貧しい地区であり、生計を立てる手段として性を商売とした女性からHIV感染が広がり、 今ではいわゆる一般の人々にまで広がっているという。最近では特に、若者の病気に対する知識・認識の低下から、 teenagerを中心にHIV感染が増加してきているといわれている。チェンライ県での過去の統計によると、 HIV陽性患者中3割がTBを発症しており、結核はカリニ肺炎共々、 適切な治療なしには致命的になりうる重篤な合併症の一つとして挙げられる。 このような現状を、一部ではあるが、実習を通して知り得た。

3)残念ながら、実際にタイNGO側の意見を伺う機会を持つ事ができなかったが、実習を通して感じた印象を示す。
今回はタイNGOに日本の研究者が介入している状況を観察した。主に、技術提供・研究開発の面で、日本の様々な手法が、 間接的にタイ北部の医療に貢献しているようだった。タイは東南アジアの中では医療先進国といわれており、 都市部では医療設備も整い人材も揃っている。そのため、日本人には、タイにはまだないもの、例えば研究技術など、 を提供する事が国際協力の観点では望まれている印象を受けた。また、日本人、つまり同じアジア人である、 ということは心理面で、少なからず役立つ気がした。

【感想】
1.鶴岡 香絵
このような形での海外実習は今回が初めてだった。
現地スタッフの方はじめ、タイの患者さん達とも少しお話をさせていただく機会があり、 その温かい人柄とどこか懐かしい雰囲気が、実習を終えた今も印象に残っている。 一方で、おなじアジア人ではあるが、馴れ合いや一方的な享受に甘んじている雰囲気はないように思われた。 自国に対する誇りや主体的に取り組む自立心がNGOスタッフの方々から感じられた。 これは医療先進国であるタイだからこそ伺い見ることができた姿勢なのかもしれないが、「協力」という概念から言えば、 非常に理想的な形がタイには存在しているように思う。

その国の政治・経済・医療技術などに大きく左右されると思うが 、国際協力という場に関して、その国あるいは国から何が求められているのか、 レベルに応じて臨機応変に考え対処していくことの大切さを垣間見た気がした。一週間という非常に限られた期間ではあったが 、得る物の多い実習だった。

最後になりましたが、このような機会を与えてくださった櫻田先生やHIV/TB research project関係者の皆さん、 そしてマッチング事務局の方々に、この場をお借りして感謝の意を表したいと思います。

【今後の提言】
1.鶴岡 香絵
私個人の提言は、「何がしたいのか」この問いに対して、明確な答えを考えていきたい、ということだ。 国際保健の場で、専門家として技術提供に携わりたいのか、保健医療の開発や基盤の構築に努めたいのか、 緊急時の医療支援に医師として協力したいのか、その他さまざまな関わり方が考えられる。

ただし、どんな方面に行こうとも、以二つの点は重要であると感じた。
一つ目は、よく言われていることではあるが、自らの専門性を高めておく必要があるということ。 特に今回のタイNGOへの研究協力、という専門領域での国際協力の場では、タイにも人材と一定の医療技術がある以上、 それよりも高度な専門知識と技術が要求されている。もちろん、医療途上国といわれる地域でも、 保健協力や体制づくりのためには、一定以上の知識と経験が問われよう。このような状況で必要とされる存在となれるよう、 スキルアップを図っていきたいと思う。

二つ目は、行動計画を立てて実行していくこと。一つ目とも関連するが、目標を設定することの大切さを、 今回同行させていただいた櫻田先生からも教えていただいた。計画を立てるには、常に意識的に様々な物事を観察し、 人の意見も参考にし、能動的に考えることが必要となってくる。これらの前段階も非常に大切な過程だと考える。

また、実際に行動してみることで失敗も含めて一つずつ、人間の幅が広がっていくと思われる。 準備から結果・反省の段階まで含めて、学ぶことが多い。また自ら経験することで、 意見もより多彩となり説得力のあるものとなりうる。これは、どの分野に進んでも、人を相手にする以上、必要となってくると考えられる。 行動計画をたて実行する、これはいまからでもできることの一つであろう。

今回、初めて国際保健の場での実習を経験させていただいた。 そして、この実習の範囲内で知りえた中でも、研究協力といっても多岐にわたり必要な技術も様々であることを知った。 あまりにも多くの機関で多彩な関わり方が可能であると、今度はその選択に迷ってしまうが、 最終的には根本に立ち返ることが必要だと感じた。「何がしたいのか、これに尽きる」と先生が仰ったのが強く印象に残っている。 その遠くの目標に向けて、必要な知識・技術を修めるべく短期的な行動計画を立て実行していく、これが大切であると思う。

また、今後も、機会を捉えて、直接的あるいは間接的に国際保健に携わっている人・機関の活動現場を見、 話を伺って、さらに見聞を広めていきたいと思う。

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